
PROLOGUE
市場を創り出すとはどういうことか。世の中のマーケッターが常に向き合わなければならない課題です。インテグレートの市場創造事業本部は、この課題と向き合いながら、成長し、学びを深めています。実際のプロジェクトを進める上で、何を学びどのように活かしているのか。マーケティングと向き合う上で何が大事なのか。入社2年目の三宅と入社8年目の竹田、二人がインテグレートで学んだ内容について、お話してもらいました。

「新しい」を伝えていく
一つひとつの発想
竹田:僕が一番印象に残っているプロジェクトは「植物性食の市場をつくる」といったものでした。今でこそ大豆ミートをはじめ植物性の食品が広がっていますが、当時はまだ「ヴィーガン」という言葉も知られておらず、一部の人たちだけのものという認識でメディアの方もあまり興味を持っていませんでした。将来、世界的な人口爆発・食糧難の時代が来ることが予測され、そんな時に植物性食が人類を救うといっても、最初はメディアの方に良い反応をもらえず苦労しました。
三宅:話を全く聞いてもらえないといった経験はあまりないのですが、メディアに想いが伝わらないと感じた経験は私もあります。私はある食品の「美味しくて手軽」といった既存の価値に加えて、新たに「幸せになる」という新しい価値を伝えていくプロジェクトに携わりました。しかし、今までとは違う価値やメッセージを伝えようとしても、どうしても「美味しい」や「手軽」など、これまでのイメージに引っ張られてしまって。「食べることで幸せに」という新しい価値を伝えようとしてもなかなか伝わらず、納得してもらえていないという経験があります。
竹田:想いが伝わらないときは、どんな風にしていますか?
三宅:私はファクトを並べて説明するようにしています。魅力を相手に伝えるために用意できる情報を整理し、イメージが沸きやすいように工夫しています。竹田さんは?
竹田:コンテンツを用意するようにしています。たとえば、カレーの「ナン」に関わるプロジェクトに携わった経験があるのですが、当時、メディアからは「結局カレーあってのナン」というイメージで、「ナン」に焦点を当てるのに工夫が必要でした。そこで、数十店舗のカレー屋さんに協力してもらい「カレーはナン派かライス派か?」といったアンケートをお客さんに対してとったり、カレーに詳しい専門家の意見を聞いたり、「ナン」をつくるために必要なタンドール窯をつくっている職人さんに日本でナンが広まった歴史をヒアリングしたり、ナン好きの方に向けてイベントを行ったり、カレーの話題の中で「ナン」に焦点を当てる理由になり得るコンテンツ開発に取り組みました。そこから、ウェブメディアに取り上げてもらったり、ナンを前面に出したコラボ商品ができたりと、道ができてきましたね。

プロジェクトは
一人では達成できない。
人が集まり世の中が変わる。
竹田:「植物性食の市場をつくる」このプロジェクトについても同様なのですが、僕達の仕事は、仲間を作ることが大事だと思います。当時は苦労したプロジェクトでしたが、数年をかけて様々なイベントなどを継続しながら活動の仲間を増やしていくことで、潮流が変わっていきました。そこから徐々に進展していって、メディアにも取り上げられ、他の食品メーカーも植物由来の食品に注目しはじめ、世の中が変わった実感を得られました。
三宅:仲間が増えていくことで流れが変わっていくという感覚はとても共感できます。e-bike(イーバイク)をもっとラフに楽しめるように、認識を変えていくプロジェクトに携わった経験があるのですが、沢山の関係者を巻き込みながら進めていけました。まずはメディアの方に実際に体験して理解を深めてもらう必要があるのですが、そのときは試乗コースのガイドさんだったり、e-bikeを貸してくれるメーカーだったり、同じようにe-bikeを広めたいという想いを持っている方々に協力していただきました。このように関係者を巻き込みながら進めていけることは、一体感があってやりがいを感じられました。
竹田:新しい価値観を共有したり、自分自身が魅力を知ったりするのは大事ですよね。世の中に商品やサービスって沢山ありますけど「やったら楽しいけどやらない」というものも多くありますよね。だからまずは自分が魅力を知る。そして、その魅力を伝えていく。これが僕達の仕事の一つだと思います。また、「楽しい」 という気持ちも大事で、僕もナンのプロジェクトに関しては、自分とその周りの仲間と楽しみながらコンテンツを進めていて、面白いと思えるコンテンツ開発を続けていたら結果がついてきた感覚でした。

プロジェクト達成に欠かせない
「多角的視野」
竹田:プロジェクトを通して、ひいてはインテグレートで働く上で三宅さんが大事にしていることはありますか?
三宅:「視野を広げる」ことです。私たちは市場やトレンドを創り出すために、メディアを巻き込み、生活者に情報を発信しています。メディアに情報を伝えるためにも、様々な引き出しを持つことが重要だと感じています。
竹田:視野を広げる意識はインテグレートで働く上でとても大事ですね。発想が固まらないよう、常に意識しておくべき部分だと思います。とくに人との出会いから視野を広げられることがあるので、三宅さんも様々なプロジェクトに携わりながら実感しているんじゃないでしょうか。
三宅:そうですね、テレビの番組ディレクターの方と話した際に強く感じました。ディレクターの方は、何よりも視聴者のことを考えているので、私の持っている情報やデータでは伝わらなかったり、私たちの提案したものと違う観点の情報を求められたりすることがありました。それからは、日常生活でのテレビの見方も変わりました。ディレクターがどういう観点で番組を作っているのか、なぜこの話題が取り上げられているのかなどを考えながら番組を見ています。
竹田:僕もインテグレートに入社してからテレビの見方が変わりましたね。「取材先で何をやっているのか」「どのような要素で番組を組み立てているのか」など、番組を作る側の発想にならないと伝えられない内容があります。まず相手の土俵に立つ、同じ土俵で会話をするために視野を広げる。僕たちは毎回異なる分野のプロジェクトに携わるので、常に視野を広げて、どのプロジェクトをどの視点で伝えていくかを考えて進めていかなければいけません。日常生活や人との出会いの中にもヒントはありますし、常にアンテナを張り巡らすことが、プロジェクトにも活きていきますよね。